"Forbidden Broadway Strikes Back!"
"On Broadway, Men Still Wear Hats"で紹介されているジョージ・フェンモアは、現在のブロードウェイよりも、「ガイズ&ドールズ」の原作などでデイモン・ラニアンが描き出した時代のブロードウェイにふさわしい人物という気がします。彼は、舞台上で使われる小道具を調達するだけでなく、ロビーで販売されるプログラム、Tシャツなどの記念品も手がけているそうです。これも<マーチャンダイジング>の一環なのだとしたら、彼の同業者はたくさんいます。ミュージカル「キャッツ」や「レ・ミゼラブル」のイギリス人プロデューサー、キャメロン・マッキントッシュはその代表でしょう。
キャメロン・マッキントッシュのマーチャンダイジング手法をからかった"My Souvenir Things"という曲があります。「サウンド・オブ・ミュージック」の中の"My Favorite Things"(邦題・私のお気に入り)の替え歌になっていて、「フォービドゥン・ブロードウェイ」のために書かれた曲です。<禁断のブロードウェイ>と名乗るこのショーは何度も来日していますから、ご存知の方も多いと思いますが、ジェラード・アレッサンドリーニという人の発案によるものです。ブロードウェイのショーやスターを笑いのめしたパロディー満載のスケッチが20以上、男女2人ずつの出演者によって次々に演じられます。わたしは1994、5年ごろに来日公演を2回見ました。伴奏はピアノ1台のみですが、出演者の歌の実力は一流で、替え歌の詞もよく出来ていたし、簡潔な日本語字幕が付いていて、大いに笑わせてもらった記憶があります。
"My Souvenir Things"は2回とも演じられて、とても受けていました。日本のミュージカル上演にも当てはまる内容だからでしょう。このスケッチの出演者は男性1人のみで、「オペラ座の怪人」の怪人のマント姿で登場します。わたしはキャメロン・マッキントッシュ、ブロードウェイのナポレオンだと名乗り、イギリスから来た、見た、勝ったと宣言します。しかし、わたしの何よりの成功はみやげ物の販売だ、と歌った彼が両手を水平に広げると、怪人のマントの内側が観客に見えます。そこには、キーホルダーやマグカップ、CD、トランプ、「キャッツ」の扮装用の付け髭などが所せましと貼り付けてあるのです。そして、「私のお気に入り」のメロディーにのせ、おみやげの数々を並べて歌っていきます。替え歌の最後はこうです。「ショーを見るまでに100ドルの出費、劇場を出るまでにさらに100ドルかかる」。子どもにねだられてTシャツやマグカップを買う親たちの姿が目に浮かぶようです。
「フォービドゥン・ブロードウェイ」は1982年から上演されており、その時々のショーや話題を盛り込んだ新しいスケッチを付け加え、大スターの物まねを中心とする定番のネタと組み合わせて、常にアップデートしながら続いているそうです。来日バージョンは日本でも通じそうなものを選んでいて、そのラインナップを反映したCDが発売されました。残念なことに、"My Souvenir Things"はそのCDに入っていないようです。わたしが持っているのは、このシリーズのオリジナル・キャスト盤のvol.1からvol.4までを収録した輸入版CDボックスです。"My Souvenir Things"はvol.4の"Forbidden Broadway Strikes Back!"の3曲目です。同CDに入っている、ルー・ダイアモンド・フィリップスとドナ・マーフィが出演した「王様と私」再演のパロディーなどは、来日公演で見た記憶があります。
CDボックスに付いている歌詞カードを読んで、ジェラード・アレッサンドリーニのユーモアがひじょうに辛らつだということに改めて気づきました。"My Souvenir Things"は、まだマイルドなほうです。"Forbidden Broadway Strikes Back!"の中から例をあげるなら、「レント」のメディア露出戦略を揶揄した"Season of Hype"、トム・ハンクス主演映画「ビッグ」(1988年)のミュージカル版をバッサリ斬り捨てる"Big"など、両作品のプロデューサーからクレームが来ないのかと心配になります。演劇でも映画でも、自分の支持する作品やスターに関する否定的意見を受け付けない人が時々いますが、そういう人には薦められないショーです。
ショーとして完成度が高いだけでなく、真面目な評論よりも核心を突いてくれる"Forbidden Broadway"は、revueとreviewの混合物とでも呼べそうな、ほかに例のないエンターテインメントだと思います。替え歌で運ばれていくショーなので、表現は省略が多く、ある程度の予備知識が必要です。たとえば、"My Souvenir Things"のすぐあとに続く"Zip"は、「パル・ジョーイ」(映画化名・夜の豹)のナンバーの替え歌で、イレイン・ストリッチを俎上に載せており、彼女の物まねで歌われます。ウディ・アレン映画を通じて彼女に見覚えのある人もいるでしょうが、彼女がアルコールの問題を抱えていたこと、「パル・ジョーイ」のほか、スティーブン・ソンドハイム作詞・作曲の「カンパニー」にも出演したことをおさえておいたほうが笑える歌詞になっています。冒頭、"Does anybody still wear a hat?"と歌っていますが、これは「カンパニー」の中の"Ladies Who Lunch"からの引用で、ストリッチ独特の声と歌い方でトレードマークのようになっている一節なのだそうです。




















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