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「女と男」「女と男2」

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"Chillers"(1990年)はパトリシア・ハイスミス(アメリカ、テキサス州生まれ)の短編ばかりをヨーロッパ中心のスタッフ、キャストで映像化していて、彼女のヨーロッパでの人気のほどをうかがわせます。同年、アメリカのケーブルテレビ局HBOが企画した"Women and Men"は、アメリカ人作家3人による3つの短編を、英米中心のスタッフ、キャストで映像化したもので、翌年、同じ趣向の続編が作られました。わたしが見たのはNHK BS-2が放送した吹き替え版で、「女と男」、「女と男2」というタイトルでした。字幕版はVHSが発売されており、それぞれ「ラブ・アフェアー」、「男が女を愛する時」という邦題がついています。日本版DVDは出ていないようです。

各編の内容は次の通りです。

「女と男」(原題:Women and Men: Stories of Seduction、1990年)

第1話 ブルックス・ブラザースのシャツを着た男

長編小説「グループ」(シドニー・ルメット監督が映画化)で知られるメアリー・マッカーシーの短編が原作です。監督・脚色は「いつも2人で」(1967年)、「アイズ・ワイド・シャット」(1999年)などの脚本家フレデリック・ラファエル。妻子持ちの旅のセールスマン(ボー・ブリッジス)と左翼思想に傾倒する女性ジャーナリスト(エリザベス・マクガバン)という、まったく共通点のない2人が列車で知り合い、行きずりの関係を持つ話です。

第2話 花火の前のたそがれ

「ミセス・パーカー/ジャズエイジの華」(1994年)でジェニファー・ジェイソン・リーが演じていた作家ドロシー・パーカーの短編に基づいています。監督はケン・ラッセル、脚色は女優としても活躍するバレリー・カーティンです。キット(モリー・リングウォルド)がプレイボーイの恋人ホービー(ピーター・ウェラー)のアパートを訪れます。2人だけの時間を過ごすつもりだったのに、何度も電話がかかってきて、それが女性からばかりなので、キットは嫉妬心にさいなまれます。

第3話 白い象のような山

アーネスト・ヘミングウェイの短編が原作です。3つの中でもっとも有名で、日本語訳も手に入りやすい小説です。監督はトニー・リチャードソンで、「哀しみの街かど」(1971年)、「告白」(1981)などの脚本家夫婦、ジョーン・ディディオンとジョン・グレゴリー・ダンが脚色しています。スペインのある駅で、男(ジェームズ・ウッズ)と女(メラニー・グリフィス)が列車を待ちながら、何事かを話し合っています。原作では、2人が何を話しているかはぼかされ、読者の想像にまかされています。この映像化では、はっきり何の話をしているかがわかるように描かれています。ぼかしたまま映像化してほしかったです。

「女と男2」(原題:Women and Men: In Love There Are No Rules、1991年)

第1話 カンザス・シティに帰る

原作は、日本でもよく読まれているアーウィン・ショーの短編集「夏服を着た女たち」(講談社文庫)に収められています。監督と脚色は、「ザ・フロント」(1976年)の脚本家で、自身も赤狩りを経験したウォルター・バーンスタインが手がけています。ボクサーのエディー(マット・ディロン)は、妻(キラ・セジウィック)が子どもを連れてカンザス・シティに帰省する費用を捻出するため、大きな試合に出ることになります。時代背景は大恐慌のころのニューヨークで、ちょっとした台詞やセットなどの美術に、時代色がよく出ている作品です。

第2話 家庭の事情

カーソン・マッカラーズの短編小説の映像化です。原作の邦訳は「悲しき酒場の唄」(白水Uブックス)に入っています。ジョナサン・デミがプロデュースし、彼の映画にかかわることの多いクリスティ・ズィーとロバート・ブレスロがそれぞれ監督と脚色にクレジットされています。広告代理店で働くマーティン(レイ・リオッタ)には妻エミリー(アンディ・マクドウェル)がいますが、エミリーは昼間から酒を手放さず、幼い子ども2人の世話もおろそかになりがちで、マーティンは仕事に集中できない有様です。この作品は朝鮮戦争の時代が背景になっています。

第3話 マーラ

ヘンリー・ミラーの短編「マリナンのマーラ」を基に、マイク・フィッギスが脚色と監督を担当しています。作家のヘンリー(スコット・グレン)はパリの街角で娼婦たちとトラブルになっていたマーラ(ジュリエット・ビノシュ)を救ってやり、食事を共にします。自分は娼婦じゃないと言うマーラとヘンリーは路地裏で愛し合います。マーラというのは、「ヘンリー&ジューン/私が愛した男と女」(1990年)でユマ・サーマンが演じたジューンと同じ女性だそうです。「ワン・ナイト・スタンド」(1997年)など、のちのフィッギス監督作品に通じるムードを持った作品です。

以上、6つの短編は、男女の会話が中心という共通点はあるものの、印象はかなりバラバラで、出来もバラつきがあります。両方とも第1話の出来がよく、見ごたえがあると思いました。ふだん映画で見かけるときとイメージの違う役柄に取り組んでいる俳優が多いのも特徴です。「ロボコップ」のピーター・ウェラーがプレイボーイを演じたり、スコット・グレンが作家を演じたりしている長編は見た記憶がありません。両者のファンには見逃せない作品でしょう。

ミステリーやSFのジャンルに属する短編を映像化するテレビシリーズはよくありますが、純文学系統の短編を取り上げる企画はひじょうに珍しいです。劇場用の長編でも、純文学の映画化に取り組む監督が少なくなりました。「女と男」に続く作品が、テレビでも劇場用映画でもいいから、作られてほしいと思います。

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