「タクシー・ドライバー ~バーナード・ハーマン作品集」
ドキュメンタリー映画「映画音楽の鬼才 バーナード・ハーマン」(1992年)と連動しているように見える、1993年に出たCDです。海外で数年前にデジタル・リマスター盤が出ていて、輸入盤なら現在も入手可能です。原題を書き写すと、"Elmer Bernstein Conducts The Royal Philharmonic Orchestra: Bernard Herrmann Film Scores from Welles and Hitchcock to Truffaut and Scorcese"となります。これに対して邦題が「タクシー・ドライバー ~バーナード・ハーマン作品集」となるのは、収録曲の中で「タクシー・ドライバー」が飛びぬけてポピュラーだからでしょうか。
エルマー・バーンスタインは「黄金の腕」(1955年)や「大脱走」(1963年)の音楽を手がけた作曲家です。ドキュメンタリーに証言者として登場し、「オリエント急行殺人事件」(1974年)の音楽に関するハーマンのエピソードを披露していました。「恐怖の岬」(1962年)が91年にマーティン・スコセッシ監督の手でリメイクされましたが、旧作のハーマンのスコアをほとんどそのまま使っていて、そのとき指揮を担当したのもバーンスタインでした。また、バーンスタインがライナーノーツに寄せた短い文章によると、彼が映画音楽を志したのは、ハーマンの「悪魔の金」(1941年、アカデミー賞作曲賞受賞)の音楽を聞いたことがきっかけだそうです。このCDの指揮者として彼はぴったりの人選だと思います。
「悪魔の金」は、淀川長治さんの文章によく登場する映画で、以前から見たいと思っているのですが、まだ果たせません。スティーブン・ビンセント・ベネーの「悪魔とダニエル・ウェブスター」という短編小説を、ウィリアム・ディターレ監督、ウォルター・ヒューストン、エドワード・アーノルドほかの出演で映画化したものです。ベネーは、ミュージカル映画「掠奪された七人の花嫁」(1954年)の原作者でもあります。「悪魔の金」は21世紀に入ってからリメイクされましたが、トラブルに見舞われて一般公開が先送りされているそうです。アンソニー・ホプキンスがダニエル・ウェブスター役で、アレック・ボールドウィンの初監督作品(出演も)と聞いて、こちらも見てみたいのですが、見られる日は来るのでしょうか。
CDに収録されている曲目を並べるより、映画の題名のほうが通りがいいと思うので、そちらを並べます。
「市民ケーン」(1940年)
「悪魔の金」(1941年)
「知りすぎていた男」(1956年)
「サイコ」(1960年)
「間違えられた男」(1957年)
「めまい」(1958年)
「北北西に進路をとれ」(1959年)
「黒衣の花嫁」(1968年)
「華氏451」(1967年)
「タクシー・ドライバー」(1976年)
CD初収録の曲が多数含まれていて、魅力的なラインナップではありますが、ハーマンの代表作が万遍なく選ばれているとは思えません。ドキュメンタリーと同じで、ヒッチコック作品を中心とするサスペンスものに偏っているように見えます。ハーマンはSF/ファンタジーのジャンルに入る映画をたくさん手がけているのに、その代表が「悪魔の金」と「華氏451」だけではさびしい気がします。
2001年に「テルミン」という映画が日本で公開され、話題になりました(製作はこのCDと同じ1993年です)。手を触れずに演奏するテルミンという電子楽器と、それを発明したレオン・テルミン博士の数奇な運命をたどるドキュメンタリー映画です。バーナード・ハーマンは「地球の静止する日」(1951年)でテルミンを使いました。クレジットされていませんが、「ジェニーの肖像」(1948年)の中のテルミンを使用した曲も、ハーマンが手がけたものだそうです。テルミンを経由してハーマンに興味を持った新しいファン層のためにも、今度はSF/ファンタジー中心のハーマンのスコアを収録したCDが発売されると嬉しいです。
上記の曲のあと、バーナード・ハーマンの肉声が4分44秒間入っています。語っている内容は、邦訳されてライナーノーツにのっています。ハーマンはここで、演劇は映画ほど音楽を効果的に使っていない、と述べています。これを読んで思い出したのが、スティーブン・ソンドハイムがミュージカル「スウィーニー・トッド」の曲を書くにあたり、バーナード・ハーマンのスタイルを取り入れている、という説です。わたしは音楽理論はさっぱり分かりませんが、曲を聞いて似ていると感じる部分は確かにありました。ハーマンの影響は、ヒッチコックを崇拝する映画監督の作品にとどまらないようです。




















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