「スターの陰で」「LAロー/発覚!」
"The Panama Deception"(1992年)の前年に、同じアカデミー賞ドキュメンタリー長編部門で受賞した作品のことを書きます。原題は"In the Shadow of the Stars: The Lives of Singers"(1991年)といいます。内容はというと、サンフランシスコ・オペラに所属して、その他大勢の役を演じる歌手たちに取材したものです。この作品は、少なくとも2度放送されたことがあります。一度目はNHK-BSで、日本語吹き替えではなく、ドキュメンタリーの場合によくあるように、オリジナルの音声より少し遅れて日本語の台詞が始まる、ボイスオーバーの手法をとっていました。このときの邦題は何だったか忘れました。二度目は、1999年の年始特集の一環として、地上波のUHF局(首都圏3局ネットワーク)が放送していました。これは字幕版で、「スターの陰で」という題名です。始まりと終わりに池辺晋一郎氏が登場し、ミュージカル「コーラスライン」のオペラ版のような映画ですと解説していました。
映画は、コーラスの60人近い歌手のうち、約10名のインタビューをかわるがわる見せながら、合間に「マクベス」などのオペラの一場面や合唱の稽古風景をはさむ構成になっています。10名近い歌手の名前は画面にクレジットされませんが、インタビューの断片がシャッフルされても、問題なくスジを追うことができます。無名ではあっても、ひとりひとり強い個性の持ち主だからこそ出来たことでしょうし、編集のテクニックがすぐれているからでもあるでしょう。歌手たちは、生い立ちや現在の仕事のこと、将来の夢について、さまざまなエピソードを交えながら語ります。コーラスの仕事を生涯続けるつもりの人もいれば、スターになる夢をあきらめきれず、ソロの役を得るためにオーディションを受けては落ちている人もいます。パートナーが初日を見に来てくれるので、おおぜいの中でも自分を見分けられるように、衣装の細かい特徴を知らせておく、とノロケるゲイの人の話や、ヨーロッパでソロの役をもらえる直前まで行ったのに、出演予定だったオペラハウスが火事で焼け落ち、契約がおじゃんになったというエピソードなど、次から次にジューシーな挿話がくり出されます。ユーモアたっぷりで、面白くてためになるタイプのドキュメンタリーですが、現実の厳しさも描かれている秀作だと思います。
"The Panama Deception"(邦題:暴かれた真実・1989年 米軍パナマ侵攻)とともに「スターの陰で」も、もっと多くの人に見てもらいたいです。アカデミー賞関連の日本語データベースを検索すると、この2本は原題のままになっている例ばかりでした。「スターの陰で」は、ボイスオーバー版と字幕版の2通りがすでにあるのだから、すぐにでもDVD化できるじゃないか、などというのは素人考えかもしれません。DVD化が無理なら再放送を望みます。
話は変わりますが、最近見直した「LAロー」のエピソードにパナマ侵攻を扱ったものがありました。少し前に紹介した「全面戦争」より5回ほど前に放送された、やはり第5シーズンのエピソード「発覚!(原題:Rest in Pieces、1991年)」です。この回ですでに、法律事務所の経営陣と若手の間がギクシャクしていることが描かれ、のちの伏線になっています。訴訟がらみの3つのストーリーラインのうち、1つは買った家が幽霊屋敷だったので売買契約を無効にして、不動産屋に払ったカネを返してほしいという訴訟で、C・J・ラム(アマンダ・ドノホー)が法廷に立ちます。2つめは、離婚訴訟を手がけて法律事務所に大きな収入をもたらすベッカー(コービン・バーンセン)の浮気がばれ、妻(ジェニファー・ヘトリック)から三行半をつきつけられる話です。邦題の「発覚!」は、このストーリーラインに言及したものです。コービン・バーンセンは、映画「メジャーリーグ」(1989年)ではチャーリー・シーンに妻を寝取られる役でしたが、このドラマではクライアントと次々に関係を持って問題を起こす弁護士の役でした。
3つめがパナマ侵攻関連で、上官の命令に逆らってパナマ市民に銃を向けることを拒絶した兵士が軍法会議にかけられます。スーザン・デイ扮するグレース・バン・オーウェン(元地方検事で裁判官を経験し、第5シーズンは一弁護士に戻っている)が軍事法廷に出向いて兵士を弁護します。検察側(つまり軍隊の側)で法廷に立つ役を、「サムワン」のブロードウェイ初演に出たジェームズ・マクダニエルが演じています。89年12月20日にマイアミ・ヘラルド紙の記者としてパナマにいた証人役で、アリソン・リードがワンシーンだけ出ていました。彼女は映画版「コーラスライン」(1985年)でキャシーを演じてデビューした人です。日本のテレビコマーシャルで見かけたのを除くと、「コーラスライン」以来初めてこのエピソードで見たので、初放送時、とても印象に残りました。インターネット・ムービー・データベスによると、わたしが見ていないだけで、彼女はたくさんのテレビシリーズにゲスト出演しているようです。近年はディズニーのTVムービー「ハイスクール・ミュージカル」(2006年~ )のダーバス先生が当たり役らしく、シリーズ3作すべてに出ています。パナマ侵攻のストーリーラインは、アメリカ軍の行動がジュネーブ条約に違反していることなどに触れていますが、かなり急ぎ足で物足りない描き方に見えました。この回だけで終わらせないで、次週に持ち越してじっくり展開させてほしかったです。




















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