「第49回ゴールデングローブ賞授賞式」
アマンダ・ドノホーは「LAロー」(1986~94年)の5年目と6年目に出演して、1992年にゴールデングローブ賞を受賞しました。ハリウッド外国人記者クラブが選ぶ同賞には、映画とテレビの両方の部門があります。したがって、ゴールデングローブ賞の授賞式には、アカデミー賞と違って、映画とテレビのスターが一堂に会します。
とはいえ、注目はほとんど映画部門に集まっているようで、テレビ部門は付け足しに見えます。たとえば、92年の授賞式のオープニングを飾ったのは、「エイント・ミスビヘイビン」のスター、ネル・カーターの歌なのですが、その歌詞の中に候補者たちの名前が盛り込まれていて、それがすべて映画部門で候補になっている人ばかりだったのです。キャシー・ベイツ(「フライド・グリーン・トマト」)、ケビン・コスナー(「JFK」)、ベット・ミドラー(「フォー・ザ・ボーイズ」)、ビリー・クリスタル(「シティ・スリッカーズ」)、ウォーレン・ビーティ(「バグジー」)らに向って、ネル・カーターはステージ上から独特の鼻にかかった声で「尊敬してるわ」「あなた最高よ」などと歌いかけます。唯一、「フライド・グリーン・トマト」と「おばあちゃんの贈り物」で映画・テレビ両部門にまたがって候補になっていたジェシカ・タンディだけが、カーターに声をかけられたテレビ部門候補でした。
歌い終えたカーターが退場すると、司会進行役のピアース・ブロスナンとジャクリーン・ビセットが登場します。アイルランド出身のブロスナンと、イギリス生まれでフランス語に堪能なビセットが司会というあたりが、外国人記者クラブの賞らしいところでしょうか。各部門のプレゼンターにも、外国語映画賞の候補になっていた「ボヴァリー夫人」のイザベル・ユペール、「ふたりのベロニカ」のイレーヌ・ジャコブが含まれていて、アカデミー賞とは明らかに違う人選です。
その意味では、テレビ部門の助演女優賞を獲得したアマンダ・ドノホーも<外国人>に違いありません。イギリス出身で、ドラマの役柄もイギリス生まれという設定でした。彼女はスピーチで<勇気あるキャスティング>と言っています。確かに、アメリカの連続テレビドラマにイギリス生まれの登場人物が出てくる場合、アメリカの俳優が英国訛りを駆使して演じることがほとんどで、ドノホーのような例は珍しいでしょう。しかし、同じ年に"Homefront"というドラマで同じ部門で候補になっていたサミ・デイビスは、「白蛇伝説」(1988年)と「レインボウ」(1989年)でドノホーと共演した、やはりイギリス出身の女優です。また、ミニシリーズ/TVムービー部門で主演女優賞を得たジュディ・デイビスはオーストラリア出身です。「暗号名はマリー」という題でNHKで放送され、「風に向かって」という題でVHSが出たそのTVムービーで、ジュディ・デイビスは反ナチス運動にたずさわったイギリス女性を演じていました。
4月9日付けのバラエティ・ジャパンの記事「クリエイティブな英国を旅する イギリス人がハリウッドを制す日!?」にも指摘されていますが、現在のアメリカのテレビドラマは、この傾向がさらに進んでいるようです。記事では、イギリス出身のヒュー・ローリーが「ハウス」でアメリカ人の主役を演じている例をあげています。ほかに、オーストラリア出身で「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」でオスカー候補になったレイチェル・グリフィスも、「シックス・フィート・アンダー」(2001~04)や「ブラザーズ&シスターズ」(2006~)にレギュラー出演しています。
アマンダ・ドノホーもジュディ・デイビスもレイチェル・グリフィスも、ハリウッドに活動の中心を移して、劇場用映画に出演しています。それなのにテレビドラマにも出演するのは、劇場用映画の魅力的なオファーが少ないからでしょう。以前はテレビドラマへの偏見がありましたが、それも薄れてきて、SFX全盛の80年代あたりから、演技派の俳優にとって演じ甲斐のある役はむしろテレビのほうに多くなってきたのではないでしょうか。
映画を上回る当たり役に、テレビドラマでめぐりあう人もいます。92年にドラマ部門の主演女優賞をとったアンジェラ・ランズベリー(「ジェシカおばさんの事件簿」)とコメディ部門の主演女優賞をとったキャンディス・バーゲン(「TVキャスター マーフィー・ブラウン」)は、そのパターンだと思います。映画でも代表作のある2人ですが、より多くの人の記憶に残るのはテレビで長年演じ続けた役に違いありません。
92年の映画部門の主な受賞結果は、作品賞が「バグジー」、監督賞が「JFK」のオリバー・ストーン、主演男優賞が「サウス・キャロライナ 愛と追憶の彼方」のニック・ノルティで、「羊たちの沈黙」が独占したアカデミー賞とはまったく違っていました。主演女優賞のジョディ・フォスターだけが両方に共通していました。
わたしの記憶通りなら、92年はBS2がアカデミー賞授賞式を生中継しはじめた年です。授賞式の翌週ぐらいに、90分ほどのダイジェスト版を放送(これは現在も続いています)するのもBS2で、90年あたりまで続いていた地上波(フジテレビ系列)での放送は途絶えてしまいました。「ゴールデングローブ賞授賞式」は、それまで見られなかったけれど、92年は<衛星映画劇場1000回記念>の一環としてアカデミー賞ダイジェスト版の前日に放送されました。その後、2、3年は同じパターンが続いたものの、ゴールデングローブの放送はストップし、数年前からBS2で再開しています(今年は授賞式自体が中止になりました)。アカデミー賞関連の報道は昔から盛んで、日本語の記事もたくさんありますが、テレビドラマの賞に関する情報は今も乏しいので、ゴールデングローブが放送される際は、わたしはテレビドラマ部門に注目しています。




















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