「LAロー/全面戦争」
Joshua Karton氏が弁護士にコミュニケーションのテクニックを指導していることから思い出したのが、「LAロー」のあるエピソードです。
「LAロー」は、ロサンゼルスの法律事務所を中心とするテレビドラマです。1時間もののシリーズで8年間続きました。毎回、複数のストーリーラインが同時進行して、その回のうちに解決するもの、翌週に持ち越されるもの、あるいは終わったと思っていた話が復活したもの、それらがからみ合う展開の、いわゆるモジュラー型のシリーズでした。主要登場人物は弁護士とそのスタッフなので、法廷シーンが多いのは当然ですが、裁判と関係ない弁護士の私生活が話の中心になることもありました。
「全面戦争」は5年目の終わり近くに放送されました。法律事務所の経営をめぐって、ベテランのパートナーと若手との対立が深まり、事務所が解散の危機を迎えるというのがメイン・プロットで、邦題はこの話に言及しています。それとは別に、クリスチャン・サイエンスの信者夫婦がウィルス性髄膜炎にかかった息子に手術を受けさせず、死亡させたとして訴えられた事件の裁判も同時進行します。それぞれ1時間ずつかけて描いてもいいくらいジューシーなネタですが、さらにもうひとつ軽めのエピソードが用意されていました。それが東側諸国の弁護士たちにアメリカ流の法廷戦術を指導するという、コントのような話です。
「白蛇伝説」(1988年)「レインボウ」(1989年)という2本のケン・ラッセル監督作品に出ていたアマンダ・ドノホーが、コミカルな持ち味を発揮して、このストーリーラインで活躍します。共産圏の弁護士たちは、ツアーを組んでアメリカにやって来て、パーム・スプリングスのホテルで集中講義を受けています。アマンダ・ドノホー扮するC・J・ラムは、講師のアシスタントとして法律事務所から派遣された弁護士ですが、まじめな講師が眠気を誘う講義を続けるのに割り込みます。高額の旅費を払った弁護士たちは、楽しむ権利があると言うのです。そして、アメリカの法廷はサーカスみたいなものでパフォーマンスが重要だと言い切り、「異議あり」の効果的な言い方を指導しはじめます。もっと大きな声で、机をバンと叩いて本気だと示しましょう、という具合です。ツアー参加者たちもノッてきて、C・Jが軍事教練の指導者、参加者たちが新兵の役回りで、ラップ調の歌を唱和しながら講義が続くのです。
Joshua Karton氏のワークショップは、もっと真面目なものでしょう。C・Jの指導法が形から入って役になりきる、イギリスの俳優が採用する演技のアプローチなのに対し、おそらくKarton氏は、メソッド演技の流儀で役の内面を掘り下げることを指導するのだと思います。というのは冗談ですが、案外、当たっているかもしれません。
「全面戦争」の3つのストーリーラインは、すべて最後にひねりが用意されています。事務所経営の話は、シリーズを継続して見ていないとオチが分からないでしょう。しかし、クリスチャン・サイエンスの話とアマンダ・ドノホーの話は、どちらもこの回だけの読み切りです。久しぶりに録画を見返したのですが、3つとも満足できる結末でした。「LAロー」は好きなシリーズなので、ほかのエピソードもいくつか見直して、またの機会にご紹介したいと思います。




















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