"The Season: A Candid Look At Broadway"
アイラ・レビン作"Dr. Cook's Garden"は、ブロードウェイの1967-68年のシーズンにトップを切って開幕し、すぐに閉幕しました。同じシーズンにブロードウェイで上演された芝居は58本ありました。そのすべてをリハーサルの段階から取材することを許された作家のウィリアム・ゴールドマンが書いたのが"The Season"という本です。
ウィリアム・ゴールドマンは「明日に向って撃て!」(1969年)のオリジナル・シナリオを書いた映画脚本家としての顔がもっとも広く知られていますが、小説家としてのデビューのほうが早く、演劇とも無縁ではありません。兄ジェームズ(「冬のライオン」「フォリーズ」)と共に手がけた作品がブロードウェイで上演された実績があります。アイラ・レビンとも無縁ではなく、「ステップフォードの妻たち」が最初に映画化されたとき(1975年)に脚色を担当しました。
ジュディ・ガーランドのステージを描写した文章から始まる"The Season"で、"Dr. Cook's Garden"が取り上げられるのは第3章です。ゴールドマンは先ずストーリーを紹介し、演出を担当していたジョージ・C・スコットと戯曲やキャスティングの問題点を話し合ったことを述べ、続いてプレビューの最中に演出家がスコットから作者のレビンに交代するトラブルが起きたことを伝えます。プレビューが再開してからは、ジェームズ・スチュアートに主演させるつもりで映画化権を買った映画会社の人の話、新聞の批評の抜粋、プロデューサー(「裸足で散歩」と「おかしな二人」をヒットさせた人物)の話を紹介します。そして、開幕後1週間で打ち切りとなったことを伝え、のちにアルゴンキン・ホテルで行ったレビンのインタビューの模様で"Dr. Cook's Garden"に関する記述は終わります。
ほぼ同様にして、58作品の舞台裏のゴシップを拾い、ゴールドマンが舞台を見た感想を述べながら、合間にブロードウェイに特有の習慣や上演の仕組みを紹介していく造りになっている本です。演劇の舞台裏を題材にしたノンフィクションは他にもありますが、ゴールドマンがとったアプローチはユニークなもので、類書は存在しないと思います。演劇と映画の両方で活躍している人がおおぜい登場しますから、演劇の知識がない人でも興味を持って読めるはずです。「ローズマリーの赤ちゃん」の文中に上演されていた最新の舞台の題名が並べられているだけで当時の空気が缶詰にされているようだと書きましたが、この本にはその1年後のブロードウェイ全体がまるごと圧縮されて詰まっています。
登場する有名人と作品の一部を書き並べます。マレーネ・ディートリッヒ、ピーター・ユスチノフ、メルビン・ダグラス、リリアン・ギッシュ、テレサ・ライト、イングリッド・バーグマン、シドニー・ポワチエ、シシリー・タイソン、サンディ・デニス、アルバート・フィニー「ジョー・エッグの死の一日」(ピーター・ニコルズ作)、マーガレット・レイトン「小狐たち」(映画化名「偽りの花園」、リリアン・ヘルマン作、マイク・ニコルズ演出)、「ヘアー」(ジョゼフ・パップ製作)、ジョエル・グレイ「ジョージM!」、「誕生パーティー」(ハロルド・ピンター作)、「ミス・ブロディの青春」(ミュリエル・スパーク原作、ジェイ・プレッソン・アレン脚色)、「プラザ・スイート」(ニール・サイモン作)、バート・バカラック、スティーブ・ローレンス&イーディー・ゴーメ。




















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