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「風の遺産」

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現実に行われた裁判が基になっていて、大物男性スター2人が弁護士役でぶつかり合うという共通点がありながら、「裁かれた壁」と対照的なのが「風の遺産」(1960年)です。これは1925年にテネシー州で行われた<モンキー裁判>を下敷きにした舞台劇"Inherit the Wind"(ジェローム・ローレンス、ロバート・E・リー作)の映画化ですが、事実に忠実な再現ではなく、場所や登場人物の名前を変え、脚色を加えています。だからこそ娯楽性が強く、スペンサー・トレイシーとフレドリック・マーチの演技合戦が楽しめる第一級のエンターテインメントです。日本では劇場未公開に終わりましたが、テレビで放送され、現在はDVDで簡単に見られます。

南部の町サムナーで、生物の教師がダーウィンの進化論を授業で教えたため、裁判にかけられることになります。学校では「神が人間を創造した」という創造論のみを教えるべきだと言うのです。この裁判は全米の注目を集め、大物弁護士2人が名乗りをあげます。進化論を支持して教師を弁護する役がS・トレイシー、進化論を否定する原告側の弁護士がF・マーチです。2人とも貫禄たっぷりの演技で、堂々と論陣を張ります。マーチが宗教学の専門家として証言台に立つという後半の展開が特に面白いです。主役2人が証人と弁護士の立場で対決するわけで、裁判劇ならではのクライマックスと言えるでしょう。

弁護士2人は名前を変えてありますが、クラレンス・ダロー(S・トレイシー)とウィリアム・ジェニングス・ブライアン(F・マーチ)がモデルです。どちらもたいていのアメリカ人が知っている有名人です。この作品に描かれているもう一人の有名人は、新聞記者のH・L・メンケンです。彼をモデルにした人物をミュージカル・スターのジーン・ケリーが演じています。メディア代表として登場するこの人物は、軽薄で単純な性格に描かれていて、ブライアンの信仰心に理解を示すダローと対比されています。このあたりの人物配置は、原作となった舞台劇の巧みなところだと思います。

舞台劇は今年、クリストファー・プラマーとブライアン・デネヒーの主演でブロードウェイでリバイバル上演されました。映像作品のリメイクも3通りあって、日本では1999年にジャック・レモンとジョージ・C・スコット主演で作られたTVムービーが見られます。「風の行方」の題でVHSが発売され、WOWOWやCSの各チャンネルで放送されました。

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