「七十年目の審判」
ジャック・レモンとケビン・スペイシーは師弟関係にあるらしく、舞台・映画・テレビで共演しています。レモンは、<AFI生涯功労賞>を受けたのと同じ年に4時間のミニシリーズに主演しました。それが日本でVHS2巻ものとして発売されたときの題名が「七十年目の審判」(1988年)です。わたしはNHKが前後編に分けて放送した吹替版「メアリー・フェイガン殺人事件」で見ました。原題は"The Murder of Mary Phagan"です。内容は有名な冤罪事件を再現したもので、ジャック・レモンはアトランタ州知事の役でした。ケビン・スペイシーが新聞記者役で出ているほか、ジョージ・スティーブンス・ジュニアがプロデューサーおよびジェフリー・レインと共同による脚色者としてクレジットされています。原案は「ラストショー」「ロンサム・ダブ」「ブロークバック・マウンテン」のラリー・マクマートリー、演出はミニシリーズ「テキサス殺人事件」などのビリー・ヘイルです。
1913年8月、アトランタ州の鉛筆工場で13歳のメアリー・フェイガンの遺体が発見されます。前日は祝日で、給料を受け取りに行ったメアリーのほか、数名しか工場にはいませんでした。その中で殺人容疑は工場長のレオ・フランク(ピーター・ギャラガー)に向けられます。彼は東部出身のユダヤ人で、南北戦争後も根強く残るヤンキーへの憎しみ、ユダヤ人差別、経済的成功者への妬みが重なる、理想的な容疑者だったのです。レオが逮捕され、状況証拠のみで死刑判決が出ますが、スレイトン知事(ジャック・レモン)が再検証に乗り出します。夫の無実を信じる妻ルシル(レベッカ・ミラー)が希望をつないだ矢先、暴徒たちによるリンチでレオは死亡。スレイトン知事の政治生命も絶たれます。裁判でレオに不利な証言をした黒人の掃除夫ジム・コンリー(チャールズ・S・ダットン)が真犯人であったことが明らかになったのは事件の約70年後でした・・・。
南北戦争後の混乱から立ち直り、経済的発展を遂げつつあった当時のアトランタの時代色がていねいに再現され、裁判をめぐる政治的駆け引きの面白さも描きこまれていて、見ごたえのある作品です。双葉十三郎著「ぼくの採点表・1980年代編」(トパーズプレス刊)で、事件の再検証のくだりがミステリーとして面白いと評されていたのがきっかけで見たのですが、わたしの記憶にいちばん残っているのは演技陣が充実していたことです。上に挙げた以外にも、ロバート・プロスキー、リチャード・ジョーダン、シンシア・ニクソン、ディラン・ベイカー、ウィリアム・H・メイシー、ロレッタ・ディバイン、キャスリン・ウォーカーなどが出演していますが、憎まれ役の多いピーター・ギャラガーが珍しく善人を演じて出色でした。
この事件を扱った映画、戯曲、小説は多数あります。近年ではアルフレッド・ウーリーの台本、ジェイソン・ロバート・ブラウン作詞・作曲、ハロルド・プリンス演出によるミュージカル"Parade"が代表例でしょう。ウーリーが代表作「ドライビングMissデイジー」のモデルにした祖母は、ルシル・フランクの友人だったそうです。ジャック・レモンとケビン・スペイシーが共演した映画「摩天楼を夢みて」の原作戯曲を書いたデビッド・マメットによる"The Old Religion"(1997年)という小説もあるのですが未読です。




















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