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「一日の旅路」

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ジョン・カンダー作曲の覚えやすくて素朴なメロディーではじまる「一日の旅路」(1994年)は、ジェームズ・ガーナーとジョアン・ウッドワードが熟年夫婦を演じる、しみじみ可笑しいコメディーでした。ウッドワード扮するマギーの旧友セリーナ(ジョイス・バン・パッテン)の夫が亡くなり、夫婦は葬儀に出席するため長時間のドライブに出ます。その道中で出会う人たち(アイリーン・ヘッカート、ポール・ウィンフィールド)との短いシーン、ちょっと変わった追悼式(葬儀ではなく)のシーン、ドライブから帰ったマギーが息子夫婦によりを戻させようとするシーンからなっていて、つまりは1日の出来事を描いています。

アン・タイラーの原作小説も同じく夫婦の1日を描いていますが、合間に回想場面がふんだんに入って、2人のなれそめや子育て中のジューシーなエピソードが書き込まれていました。しかし、TVムービー版では回想の部分はバッサリ切ってあります。オードリー・ヘップバーンとアルバート・フィニーの「いつも2人で」(1967年)風に回想を織り込む脚色だったら、前後編に分けなくてはならないくらい長くなりそうなので、回想場面がないと不満を言うよりは、原作の白眉と言うべき追悼式の場面を残してくれたことを喜びましょう。「慕情」と「知りすぎていた男」の主題歌が歌われる追悼式のアイデアは、原作者がどうやって思いついたのか知りませんが、ほんとうにケッサクな趣向です。

映画館の大画面にこだわる人には、こういう<東芝日曜劇場>みたいな小品はTVムービーでじゅうぶん、わざわざ映画化する必要なし、という意見の持ち主が多いかもしれません。わたしは、たまにはこういう小品を映画館で見たいと思い続けています。この種の内容は、TVムービーのほうに多いと分かってからは、テレビの単発ものに注目するようになりました。ジェームズ・ガーナーもジョアン・ウッドワードも、テレビの意欲作に数多く出演しています。

この作品の出演者で、もう1人注目したいのがヘンリー・ジョーンズです。彼はガーナーの父親役で、最初のほうにワンシーンだけ出ています。ヘンリー・ジョーンズは、アイリーン・ヘッカートと共に舞台と同じ重要な役で出演した「悪い種子」(1956年)でこそスクリーンに長く登場しましたが、ほかの時はたいていワンシーンの出演で、しかも印象に残る人です。たとえば、「めまい」(1958年)では転落死の検視審問のシーンに出てきて、ジェームズ・スチュアートに無罪を言い渡す役でした。「明日に向って撃て!」(1969年)では自転車のセールスマン役で、これからは馬でなく自転車の時代だという意味の台詞を言ってました。

なお、「一日の旅路」というのはVHSで発売されたときのタイトルです。NHK総合で放送されたときは「旅はみちくさ~モラン夫妻の長い一日~」という題名でした。最近のCSでの放送も「旅はみちくさ」という題名のようです。原作のタイトル「ブリージング・レッスン」は、ラマーズ法の呼吸の練習を意味しています。さらにこの呼吸法がどういう意味を持っているかは、ぜひ原作をお読みください。文藝春秋社から翻訳が出ていて、文庫もあります。新刊書店では手に入らないかもしれませんが、古書店や図書館でどうぞ。

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2008年4月

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