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"A Family Affair"

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ウィリアム・ゴールドマンが自作を脚色した映画の中で、ミュージカルに向いているのは「プリンセス・ブライド・ストーリー」(1987年)でしょう。映画の主題歌はオスカーにノミネートされましたし、子どもにも大人にもアピールする個性的なキャラクターが多数登場しますから、ミュージカル化された姿を容易に想像できます。実際、アダム・ゲッテル(リチャード・ロジャースの孫)とゴールドマンが共同でミュージカル化を進めているというニュースを耳にして、続報を期待していましたが、ゴールドマンとゲッテルの意見の食い違いからプロジェクトが中断されてしまったとのこと。

このプロジェクトを除けば、ウィリアム・ゴールドマンが関わったミュージカルは表題の"A Family Affair"(1962年1月から3月にかけて65回上演)のみです。これはかなり興味深い顔合わせの作品です。音楽はジョン・カンダーで、彼が初めてフルスコアを担当した作品です。カンダーはこのあとフレッド・エッブとのコンビで「キャバレー」「シカゴ」「蜘蛛女のキス」などを発表します。作詞はカンダーとジェームズ・ゴールドマン。台本がジェームズとウィリアムのゴールドマン兄弟。ジェームズ・ゴールドマンは、このあともミュージカルと関わりを持ちます。スティーブン・ソンドハイムの「フォリーズ」の台本を手がけただけでなく、先日ご紹介したTVオリジナル・ミュージカル"Evening Primrose"の脚色も担当しており、ソンドハイムの協力者のひとりになりました。演出はハロルド・プリンスで、"A Family Affair"は彼が初めて演出を担当した作品です。プリンスがこれ以前に手がけたのは「くたばれヤンキース」や「ウエスト・サイド物語」のプロデュースでした。このあと彼がプロデュースか演出(あるいは両方)を担当したミュージカルには、誰もが聞いたことのある有名作品がならびます。「屋根の上のバイオリン弾き」「キャバレー」「カンパニー」「フォリーズ」「リトル・ナイト・ミュージック」「キャンディード」「スウィーニー・トッド」「エヴィータ」「オペラ座の怪人」「蜘蛛女のキス」「パレード」などです。

"A Family Affair"のストーリーは、結婚を決意した若いカップルが結婚式のプランを練っていると、双方の両親があれこれと口を出してきて騒動になる、というシンプルなものです。若いカップルを演じたのが、「ウエスト・サイド物語」初演のトニー役だったラリー・カートと、「ザ・ファンタスティックス」初演のルイザ役だったリタ・ガードナーでした。実は、ハロルド・プリンスと交代する前、この作品の演出家は「ザ・ファンタスティックス」と同じワード・ベイカーでした。若いカップルとその両親という人物配置は「ザ・ファンタスティックス」そのものなので、想像するに、オフで成功した前作の二番煎じ的な企画だったのではないでしょうか。

2年前、"A Family Affair"のオリジナル・キャスト盤が初めてCD化されました。購入して聞いてみると、印象に残るナンバーはいずれも新郎の母を演じたアイリーン・ヘッカートが歌っているものでした。ここでの彼女の役どころは映画「殺しの接吻」と似通っていて、典型的なジューイッシュ・マザーです。"My Son The Lawyer"というナンバーでは息子が弁護士になったことを自慢していて、医者になった長男を自慢する「殺しの接吻」と同じです。ヘッカートは、ふだんは「ピクニック」(ウィリアム・インジ作)や「悪い種子」などのストレート・プレイに出ていて、ミュージカルへの出演はこの作品だけのようですが、歌もけっこう達者だと思います。ちなみに、彼女の代表作のひとつに「バタフライはフリー」の母親役があります。盲目の息子を心配するあまり息子の恋人と対立する役どころで、舞台と映画で同じ役を演じ、映画版でオスカーを受賞しました。「バタフライはフリー」の母親もジューイッシュ・マザーですが、カリカチュアにとどまらない複雑さが感じられました。

"A Family Affair"の脇役でブロードウェイ・デビューを飾ったリンダ・ラヴィンという女優がいます。彼女がトニー賞主演女優賞を受けたのがニール・サイモン作「ブロードウェイ・バウンド」の母親役でした。この母親もジューイッシュ・マザーでありながら、ジョークの対象としては描かれていませんでした。TVムービーとして映像化された(日本では映画館で公開されました)ときは、その役をアン・バンクロフトが演じていて、彼女の演技もすばらしかったです。ジョージ・ラフトとダンスした思い出を語るところなど、はっきり記憶に残っています。

"A Family Affair"は数々の才能をブロードウェイに送り出したのに、リバイバルもされず、顧みられることがない作品です。しかし、現在<ブロードウェイを目指している>ミュージカルの中に、似た題名・設定のものがあります。ハーベイ・ファイアスタインが台本を手がけ、出演もする"A Catered Affair"がそれです。娘の結婚式を派手にしてやりたい母親と、その資金を仕事上の投資に回したい父親が出てくる話らしく、元はパディ・チャイエフスキーが書き、セルマ・リッターが主演したテレビドラマで、映画化もされています。映画版はゴア・ヴィダルの脚色、リチャード・ブルックスの監督、母親役がベティ・デイビス、父親役がアーネスト・ボーグナイン、娘役がデビー・レイノルズという布陣ですが、日本未公開のようです。この手の結婚式にまつわる話はミュージカルにしやすいのでしょう。ヴィンセント・ミネリ監督の「花嫁の父」(1950年)がミュージカルになる日も近いのかもしれません。

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2008年4月

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