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"The Mousetrap and Other Plays"の序文

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アイラ・レビンはアガサ・クリスティーの戯曲集に序文を寄せています。収録されているのは「ねずみとり」「検察側の証人」「そして誰もいなくなった」「評決」「死との約束」「ホロー荘の殺人」「ゼロ時間へ」「殺人をもう一度(五匹の子豚)」の戯曲8作品です。このうちオリジナル戯曲は「評決」のみで、あとはクリスティー自身が先に発表した長編小説・短編小説・ラジオドラマを舞台用に脚色したものばかりです。

レビンは、ミステリー劇は作家1人につき傑作が1つしか書けない特殊なジャンルだと述べて、ただひとり、クリスティーだけが「ねずみとり」「検察側の証人」「そして誰もいなくなった」と3つも傑作を残したと誉めちぎっています。レビンが他にミステリー劇の名作として挙げているのは、エムリン・ウィリアムズ作「夜は必ず来る」、パトリック・ハミルトン作「ガス燈」、ウィリアム・マーチ原作、マックスウェル・アンダーソン脚色「悪い種子」、フレデリック・ノット作「ダイヤルMを廻せ」、アンソニー・シェーファー作「探偵/スルース」です。

レビンのリストに入っていない有名なミステリー劇を思い浮かべると、ジョセフ・ケッセルリング作「毒薬と老嬢」、J・B・プリーストリー作「夜の来訪者」など、確かに1作だけ飛びぬけて評価の高い例が目立ちます。でも、P・ハミルトンは「ロープ」、F・ノットは「暗くなるまで待って」、プリーストリーは「危険な曲がり角」を加えたいと考える演劇ファンも多いのではないでしょうか。

レビン本人が書いたミステリー戯曲では「デストラップ」が十分リストに加わる資格を持っていると思います。ロングランの記録では、「ねずみとり」には負けるものの、「検察側の証人」や「探偵/スルース」をしのいでいますから。レビンのほかのヒット戯曲はいずれもコメディーで、ミステリーものは短期間しか上演されませんでした。もちろん、短期上演で終わった作品の中に傑作がまぎれている可能性もありますが、代表作は「デストラップ」で決まりでしょう。

「デストラップ」の初演は1978年で、この序文が書かれたのと同じ年です。クリスティーが亡くなったのが76年1月なので、彼女の没後に戯曲集出版の企画が持ち上がったのでしょう。レビンは、劇作家を目指す若者に対して、クリスティーの原作小説と戯曲版を読み比べれば、戯曲では登場人物を減らしてプロットを単純化するのが成功のコツだと分かるだろう、とアドバイスしています。序文のこのあたりを読んでいると、「デストラップ」でベテラン作家シドニーと新人作家クリフォードがミステリー戯曲の書き方を論じる場面が連想されて興味深いです。

また、最後の段落では、レビンが15歳のとき「そして誰もいなくなった」をニューヨークの劇場で見て、ミステリー劇のスリルに夢中になった思い出を語っています。海外の通信社が配信したレビンの訃報記事にもこのエピソードが書かれていました。短い文章ですので、アイラ・レビンがお好きな方は英和辞典を片手に読んでみられることをおすすめします。アマゾン・ジャパンの「なか見!検索」機能を利用すれば簡単です。

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2008年4月

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