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「宵待草」「シーラ号の謎」

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"Prime Time Musicals"の収録曲を紹介したあと、プロデューサーのブルース・キンメルは「シンデレラ」と"Evening Primrose"の曲を選ばなかった理由を、この2つのTVオリジナル・ミュージカルについては別のCDでとりあげているからだと述べています。

"Evening Primrose"(1966年)はスティーブン・ソンドハイムが作詞・作曲を手がけた作品です。彼は「ウエスト・サイド物語」と「ジプシー」の作詞で世に出て、「ローマで起った奇妙な出来事」からは作詞と作曲の両方を手がけるようになり、つい先日リバイバル版がNHK教育で録画中継されていた「カンパニー」や、イングマル・ベルイマン監督の「夏の夜は三たび微笑む」に基づく「リトル・ナイト・ミュージック」などを発表し、ブロードウェイで押しも押されもせぬ存在になりました。ジョニー・デップ主演、ティム・バートン監督のコンビで映画化されて公開間近の「スウィーニー・トッド」もソンドハイム作品です。

ソンドハイムには熱心なファンが数多くいて、彼のどんなマイナーな作品でも聞いてみたい、所有したいと思っているようです。だから、通常振り返られることのないTVオリジナル・ミュージカルでも、ソンドハイム作品となると話は別なのです。"Evening Primrose"のために書かれた4つの曲は、最低でも3種類のCDで聞くことができます。わたしが持っているのはマンディ・パティンキンの"Dress Casual"というアルバムのみで、ここではパティンキンとバーナデット・ピータースの顔合わせで収録されています。パティンキンとピータースは映画俳優としても活躍していますが、ミュージカルが本業で、ソンドハイムの「ジョージの恋人」で共演しました。ブルース・キンメルが手がけたのは"Sondheim at the Movies"というCDで、これには「薔薇のスタビスキー」「レッズ」「ディック・トレイシー」など、ソンドハイムが映像のために書いた音楽が集大成されているようです。

"Evening Primrose"はジョン・コリアの短編小説を原作としています。わたしの知る範囲では、今月出版された『ナツメグの味』(河出書房新社)に「宵待草」として収録されたものが"Evening Primrose"の原作の初翻訳です。小説は、世を捨てて百貨店にひきこもることにした詩人スネルの手記の形をとっています。スネル以外にもさまざまな動機から百貨店に住み着いている人たちがいました。スネルは、子どものころに百貨店に置き去りにされたエラという女性と恋に落ちます。TV向けミュージカルでは、スネル役をソンドハイムと親しかったアンソニー・パーキンスが演じました。

「シンデレラ」と違って"Evening Primrose"の映像はDVD化されていませんが、ニューヨークのMuseum of Television and Radioが所蔵していて、リクエストすれば見られるのだとか。インターネット・ムービー・データベースのこの作品のページには、博物館に出向いて作品を見た人の熱のこもったコメントが寄せられています。

ソンドハイムとアンソニー・パーキンスが協力した他の作品に映画「シーラ号の謎」があります。2人が執筆したオリジナル・シナリオに基づくハーバート・ロス監督のミステリーもので、パーキンスは出演していません。これは690円のDVDで簡単に手に入れられます。ニューヨークまで行かないと見られない"Evening Primrose"と対照的です。もし"Evening Primrose"がジョニー・デップあたりの主演でリメイクされれば簡単に見られるようになるかもしれません。

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2008年4月

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