"Dr. Cook's Garden"
1967年、「ローズマリーの赤ちゃん」がベストセラー・リストをにぎわせていたころ、アイラ・レビンの"Dr. Cook's Garden"という戯曲がブロードウェイの舞台にかけられました。これも短期間の上演で終わってしまいましたが、のちにTVムービーとして映像化されています。日本では、この戯曲が翻訳上演されたことも、TVムービーが放送されたこともないみたいです。数年前、戯曲をネット書店で注文して読んでみました。
ニューイングランド州の小さな町が背景となっていて、タイトルのドクター・クックは町でただ一人の医師という設定です。彼のところに医者になりたての若者ジムがやってきます。ジムはこの町の出身で、ドクター・クックは久しぶりに再会する彼の恩人です。2人の台詞には舞台に登場しない町民の名前がたくさん出てきて、あの人はどうなった、この人はどうなったとゴシップに花が咲きます。のどかな始まりから打って変わって、作者はドクター・クックに関する恐ろしい疑惑を提示します。ジムはその疑惑を確信に変えて、ドクターと対決します。読みながら、10年ほど前にアメリカではなくイギリスで発覚し、日本でも報道された、小さな町の医師をめぐる事件を連想しました。
アイラ・レビンは、小説「ブラジルから来た少年」でクローン技術を題材にし、「ステップフォードの妻たち」ではロボットテクノロジーを取り上げました。いずれも、近未来SFの題材にふさわしそうなテーマなのに、現代の話として書いている点が共通しています。"Dr. Cook's Garden"は、最新テクノロジーこそ出てこないものの、同じ系列に入る作品だと思います。ここで扱われている問題は今もまったく解決しておらず、イギリスの事件と同じことが世界のどの町で現在進行中であっても不思議ではないと言えます。戯曲が書かれた40年前に荒唐無稽と片付けられたことが、現在は現実味を持つようになったのかもしれません。
配役のことを書きます。舞台では、ドクター・クックはバール・アイブスが演じました。映画「熱いトタン屋根の猫」ではビッグ・ダディ役でした。ウィリアム・ワイラー監督の「大いなる西部」でチャック・コナーズの父親を演じてオスカーを受賞した人です。舞台のジム役は「2001年宇宙の旅」や「バニー・レークは行方不明」のケア・デュリアでした。TVムービーでのドクター・クックはビング・クロスビーでした。彼の悪役は珍しいと思いますし、犯罪ものに出演するのも珍しいでしょう。コロンボ警部の候補だったと言われますが、実際にミステリーものに出演した例はこの作品ぐらいではないでしょうか。




















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